特区230914レポート

レポート

毎月ワードアップで行われる即興演奏イベント「特区」。
普段はフリーセッション的な空気が強いが、最近はいつも来る人同士で進行や企画を持ち回りで考える流れができつつある。
今回はSlow Motion Daze のボーカル及びギター担当のオオノ氏が司会進行を行った。
Slow Motion Daze では即興演奏が挿入されることが多く、その時のオオノの考え方について説明・体験するとの触れ込みだった。ただただ長いオオノの演奏をバンドメンバーとしては彼の気が知れないと思っていた。解決策の手がかりが何か得られるのではないかと期待を抱かせるには充分だった。

会場のスタジオに入ると、椅子が並べられ壁には白いスクリーンが張られていた。
さながら研究室のゼミのような雰囲気。
オオノがプレゼンテーションソフトを起動する。
最小化されたスライド一覧には豆粒ほどのサムネイルが20枚前後。
オオノはカーソルキーを使うでもなく、サムネイルをひとつひとつクリックして話をしてゆく。

冒頭、ニールヤングやニルヴァーナの長く無軌道な演奏の動画が流される。

これが流れました。


タイムラインをかいつまみながらギターの弦やアンプなど破壊したものを実況し、「彼は狂気と陶酔に満ち溢れている」と説明した。オオノのギターの演奏はどうやら、これを意識しているらしい。
ニールヤングのフジロック出演の動画のラストについては、ギターを置いてキーボード担当に歩みよったニールヤングを「やりつくした」と説明し、「もう帰ろうや」とアテレコをした。オオノがそのような傍若無人さにあこがれて演奏しているのだとしたら、もう少し対等な立場でのセッションを参考にしてほしい。

その後は大野の経験則に基づくインプロの定義やコツを説明していた。「絶えずノイズを出し続ける」
「アンサンブルが成立したと思われたら破壊する」「他人につられないようにする」と、実践的なのか偏っているのかよく分からない供述であった。ただ、彼の演奏はその説明そのものであったため、苦々しくも納得するしかなかった。そのため、「インプロは実質ちいかわの世界」「弱みを見せたら年収全額持っていかれると思え」という説明も、おもしろ狙いのパンチラインである以上に実際にそう思っているのだろうと受け止めるしかなかった。

参加者に演奏を実践させるタイミングもあった。この日は、大野の営業に応じて来てくれた即興を初めて行うバンドマンの方々も参加した。オオノの演奏についての説明は抽象的でありつつ初めての人にはハイレベルであったが最終的に大野のようなことをする形式に落ち着いた。
オオノは参加者のけいれん度を採点したり、半ば強引に参加者を当てたりやりたい放題だった。大野が優しくあろうとしているが結局自己中心的である人物であることは参加者には知れ渡っていたため盛り上がった。

オオノにとって即興演奏とは「各々が自分のことに徹したちいかわの世界」であることは確からしい。同時に、即興演奏の方法としては数多くある正解の中でも最もシンプルなものだと思う。ただ1つ指摘するなら、大野は普段の言動が少なからず”ちいかわ”じみていることは受け入れなければならないだろう。今回のイベントは正直、即興演奏初心者向けと言うよりオオノ中級者向けのイベントになっていたと思う。
前者に関しては他のレギュラーメンバーの意見を反映させれば、よりそれらしいものになるかもしれない。一方、後者の方針に振り切らせてしまう可能性も、個人的には無視できなくなってしまった。

今後の展開に期待したい。

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