あらすじ:3ピースのバンドのライブの前に二泊三日の旅行を入れたら2日目にギターボーカルが病気になり、3日目にドラマーに緊急の用事が入った。ライブまで24時間を切るがプランは固まらない…。岐阜と名古屋は面白かったです。
前回はこちら↓
空港、ラウンジ。コーラを飲み、椅子に腰掛けて考えを整理する。電車に乗っている間に何巡か考えがまとまったと思う。
最近のソロのセットはインダストリアルであまりメロディックじゃない。そのままの状態でセッションバー的合奏は難しい。かといってバンドのフリー演奏フェイズのような感じで持ち時間が持つとも考えにくい。どちらかと言うと、お客さんを私のフィールドに誘い込んだ方がやりやすい。手持ちの浮いている機材を触ってもらうことにしよう。
そこまで考えたところで企画書っぽいものを書いてみる。まだ具体的には何も決まっていない気がする。こういうものがあると自分の中で腹が決まってくる…かも?何か関係者に情報共有するときも便利?

とりあえず主催の人とコンタクトをとって確認と了解を得らねば…。何から聞けばよいのか…?と考えているうちに飛行機に乗って、鹿児島に着いて、バスに乗ってまちに着いた。

そのまま明日のイベントの主催のバー・レミーに行く。レミーのレミオ氏もこちらの状況は把握していてくれたようで、だいぶ優しく話をできた。大野が私の思案の様子を伝えていたようだ。こういう時には手が早くて感謝。うまく準備ができたらセッションのワークショップを行いたい、という事で了解を得る。今思うとギターやベースはスタンバイさせるのかとかよく考えると決まっていたような、いなかったような、出た所勝負だった気もする。とりあえず「やる」と宣言して決意を固める。

帰宅して、使えそうな機材を探す。こういう時、使えたら一番重宝するのがニンテンドー3ds(及び2ds,3dsLLなどなど…)。予備に何台も本体を持っていてその中にめぼしいダウンロードアプリはそれぞれ揃えている。たまーにしか触らないので、もし動かなかったらと不安に思いながら充電して寝る。
起床。電源もついたし、バッテリーももつのでDSで行くことにする(DSと3DSの間には大きな違いがあるので書き分けたい所だが、読みにくいので以降はDSと表記する。)。さて、どのアプリを使うか。DSのアプリにも色々あるが、原則KORG(有名シンセサイザーメーカー)開発のアプリ2種のうちどちらかである。ざっくばらんに説明すると、電子音しか鳴らないが自由に音色を設定できる方と、いろんな楽器の音が出るような所謂(いわゆる)キーボードに近い方だ。
どちらも、タッチパネルを押すと設定した調(スケール)の音が出る状態(モード)がある。音を設定するより選んだ方が間に合いそうなので「キーボード的」な方を使うことにした。各トラック(楽器の割り当て)に上モノ・リード音・ベース・ドラムを2種類ずつ選ぶ。DSの説明をするためにデモソングを鳴らしたほうが良さそう。ササッと4小節のダンサブルなループを打ち込む。
ここまで来ると、(1)普段のソロ演奏→(2)そのままDSのデモソングを差し込む→(3)DSや機材の説明→(4)お客さんにDSを触ってもらうタイプのセッションタイム という流れが浮かんで来る。となると説明で何を話すのか、セッションの進行の段取りを考えなければならない。
あとは会場で考えることにする。
スタッフ入りに合わせてライブハウスに行き、セッティングを確認する。こちらの機材の総量に合わせて、ライブハウスにある適切な大きさの机を都合してもらいステージ上でのレイアウトを考える。ファミレスの2人掛けの面積のテーブルに、向かい合せになって舟盛りとDSを並べたお盆を置く。真ん中にマイクを置けば、舟盛りもDSも操作しながら説明ができる。

持ち時間をベースに、デモンストレーションと説明とセッション・ワークショップの時間配分を考える。それにしても、ほとんど予告もなしにワークショップを持ちかけたところで反応はあるのだろうか。ほぼほぼギャンブルである。リハーサルや開場を経るうちに、知り合いとか何回か会ったことがある人がぽつぽつと見つかってくる。「参加型のコーナーにしたから、よろしければやってみませんか」みたいなことを話しまくってみる。どんな反応だったかは覚えていないが、とにかく色んな人から励まされた。

挨拶を続ける中、イベントが始まる。全10組中3組目。バーに来た時に会ったような人などがたくさん来ている。普段のライブハウスのブッキングイベントより、客層が広くて明朗そうなハッピー感がある。広い意味でのロック以外に、オールディーズとかレトロ歌謡のユニットもある。本来は私達もロック枠だったと思うのだが、今回は不思議系の音楽なので馴染むかどうかは運次第だろう。
それで私のコーナーが来た。バンドで私を知っている人もきっとソロの様子は知らないんだろうと思う。だが、怪音を出しながら寿司屋がのたうち回っているのは同じなのでまぁまぁ受け入れられている雰囲気はあったと思う。ライブも含め本当に初見の人にはどう映っているのだろうか気になってしまう。獅子舞とかビールかけとか現象だけ聞くと意味が分からないが受け入れられている。そういうものを目指してみたい。
一つずつDSのソフトの再生ボタンを押してテクノを展開させてゆく。バンドのリフをSwitchのコントローラーで演奏しながら壊れたメトロノームを意識して太ももから手首まで左右に揺らす。これは序盤のつかみとして正しいのだろうか?ひとまず我流の演芸としての「型」は成立させたので、一度MCに入る。
本来はSlowMotionDazeという三人組のバンドで出るはずだったこと。それが私以外来れなくなったこと。などから、始まって丁寧な挨拶をする。バンドのドラマーがよく通っているのでどんな様子なのか気になっている。レミーはセッションバーなので、こちらも私なりのセッションのコーナーをやりたいと話す。
ここで、レミー店主のレミオ氏から「オカマバーだよ!」とちゃちゃが来る。レミオ氏は女の服を着ている。『カテゴリー的にはオカマだったのか』と納得した。ゲーム機のことを全てピコピコと言うくらい私の認識は粗かった。
それで、参加者を募ってみたら、やけにゴキゲンな男の人がやってきた。彼は後日レミーで1日店長をするらしい。あっという間にあと2人ステージに上げていた。DSのタッチパネルを押してそれぞれ音を出している。操作でトラブルが起きていないか注意しつつも、全体の音数を補うようにSwitchで演奏する。
ふと気がついたのだが、一斉に止まれるような雰囲気にならない。DSで出る音を変えながらもどんどん混沌としてくる。ゴキゲンな彼のテンションが高くなる。そして歌い出す。多分「明日はいい日になるのか」みたいな歌だったと思う。「ん〜わからんっ」私はそんな合いの手を入れていた。いい時間になってきたので踊ってみる。実際に終わるのかは分からないが、一連の儀式としては踊りだしたらフィナーレなのだと私が一方的に決めている。
盛り上がったのかどうなのか分からないが「ありがとう」といえば終わったような感じになる。ゴキゲン氏に感謝しつつ、彼の1日店長の告知を念入りにしておいた。
私達は7日後にもライブがあって、その告知をするべきだったと気がついたのは片付けてからしばらくしてからだった。
助かったと思いながら終わるまでライブを観ていた。座れるスペースは多かったけど、どんどんと盛り上がってきて最後の方はスタンディングになった。それを後ろの方でソファーでゆっくりと観ていた。

とにかく、連日なんとかなった。
次の日は墓参りをした。調理用白衣を洗濯したのはそのもうちょっと後だった。
(終)

